公開日2020年9月20日 最終更新日 2022年1月10日
みなさんこんにちは、michiです。
前回の記事では検査の種類と方法について学びました。
今回は管理図について勉強していきます。
管理図は頻出で、QC検定3級にも出てくる分野なので、必ず理解しましょう!
キーワード:「管理図」「管理限界線」
目次
①管理図とは
管理図とは、工程の状態を安定させるために使用される折れ線グラフです。
管理図を使う目的は、工程が安定な状態か否か(異常がないか)を判断することです。
管理図では、管理限界線「上方管理限界線(UCL)、下方管理限界線(LCL)」を設けて、工程の状態を判断します。
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注意点は、「管理限界線≠規格値」という点です。
管理限界線は実測データから求めるのに対し、規格値は生産者が消費者に保証する値のことです。
規格値は「仕様」とも言われます。
通常、管理限界線は規格値よりも厳しく設定されます。
そうでなければ、「安定した工程の状態で、規格外品を製造」している状態になりかねないからです。
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②管理図と工程能力指数
規格値と聞くと、記事「工程能力指数の使い方」に書いた、工程能力指数を思い出します。
工程能力指数は、規格値(または平均値)と標準偏差の比から、生産能力を評価しました。
しかし、工程能力指数だけでは、工程の状態が安定化否かは判断できません。
なぜでしょうか?
(。´・ω・)?
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工程能力指数では、ばらつきの少ない(標準偏差の小さい)製品に対し、規格の幅が十分すぎるほどあるとき、実測値の変化に異常あっても検知できないからです。
また、その実測値の変動をみることはできないため、工程の変化をうまくとらえることができません。
では「管理図だけを使えばよいのでは?」というと、そうでもありません。
なぜなら、管理図は実測値をもとにその変動を評価しているに過ぎないため、規格値を反映できないからです。
つまり、先にも書いたように、「安定した工程の状態で、規格外品を製造」しかねない状態になります。
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以上をまとめると、
- 工程能力指数:製品がどの程度規格を満足しているかを評価
- 管理図:製造工程の安定度を評価
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③管理図の種類
管理図には、大きく分けて「計量値」に対する管理図と、「計数値」に対する管理図があります。
「計量値」に対する管理図は以下の4種類です。
- \(\bar{x}-R\) 管理図:平均値(\(\bar{x}\)) と範囲\(R\) の管理図
- \(\tilde{x}-R\) 管理図:中央値(メディアン)(\(\tilde{x}\)) と範囲\(R\) の管理図
- \(x-R_s\) 管理図:個々の測定値(\(x\)) と移動範囲\(R_s\) の管理図
- \(\bar{x}-s\) 管理図:平均値(\(\bar{x}\)) と標準偏差\(s\) の管理図
※\(\bar{x}-R\) 管理図はQC検定3級の出題範囲でもあります。
※ \(\tilde{x}-R\) 管理図 と \(\bar{x}-s\) 管理図は、QC検定1級の範囲になります。
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「計数値」に対する管理図は以下の4種類です。
- \(np\) 管理図:不良個数の管理図
- \(p\) 管理図:不良率の管理図
- \(c\) 管理図:欠点数の管理図
- \(u\) 管理図:単位数当たり欠点数の管理図
※\(np\) 管理図と\(p\) 管理図はQC検定3級の出題範囲でもあります。
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各管理図の作り方は、次回の記事にまとめます。
今回の記事では、管理図に使われる用語と管理図の見方を説明していきます。
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④管理図に使われる用語
管理図に使われる次の用語は覚えましょう
- 中心線(\(CL\)) :平均値を示す線
- 管理限界線:中心から(一般的に)標準偏差の3倍を取った線 「上方限界線(\(UCL\) と下方限界線(\(LCL\)))」 がある
- 群:サンプリングされたデータのかたまり
- \(n\) :群の大きさを表す値
管理図では、下グラフのように各用語が使われます。
中心線と管理限界線は、グラフをみればわかりやすいのですが、群と\(n\) が少しわかりづらいですね。
そこで、次の例題を考えてみましょう。
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ある養鶏場では、毎日2000~3000個の卵を生産しています。
この養鶏場は日々生産される卵の重さを管理しようとしています。
ただし、すべての卵の重さを測る設備がないため、毎日10個をランダムにサンプリングして、重さを測っています。
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この場合で考えると、群は「毎日サンプリングされる10個の卵」になります。
つまり20日間では、20個の群が存在することになります。
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またサンプルサイズ \(n\) は、「10」となります。
なぜなら、一つの群の中に卵は「10」個あるからです。
この \(n=\)10個 の平均が\(\bar{x}-R\) 管理図でプロットされる点になります。
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卵の生産量は、毎日2000~3000個とばらつきがありますが、サンプリングされた10個を対象にして、管理図による管理が可能となります。
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⑤管理図のミカタ
管理図の目的は、「工程が安定な状態か否か」を判断することでした。
管理図をみて、工程に異常があるか否かを判断するには、「JIS Z 9021(シューハート管理図)」で規定されている、「管理図の異常判定の基準」の8つのルールのいずれかにあてはまるかを確認します。
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シューハート管理図による管理方法は、「3シグマ法管理図」とも呼ばれます。
中心線と中心線から標準偏差の3倍(3シグマ)の管理限界線の間に、1倍(1シグマ)、2倍(2シグマ) の値で線を引き、領域A,B,C に分けて考えます。
「管理図の異常判定の基準」の8つのルールは以下になります。
- ルール1:1点が領域A を超えている
- ルール2:9点以上が連続で中心線に対して同じ側にある
- ルール3:6点以上が連続で増加または減少している
- ルール4:14点が連続して交互に増減している
- ルール5:連続する3点中、2点が領域A またはそれを超えた領域にある
- ルール6:連続する5点中、4点が領域B またはそれを超えた領域にある
- ルール7:連続する15点が領域Cに存在する
- ルール8:連続する8点が領域Cを超えた領域にある。
それぞれのイメージは下図の通りです。
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ルール8つをすべて覚えるのは大変です。
ヽ(無`З´理)ノ
QC検定では、ルール1とルール3、できればルール2を覚えておけば大丈夫です。
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さて、8つのルールを紹介しましたが、おおまかに次の3種類に分けられます。
- ばらつきが大きくなった:ルール1,3,5,6,8,
- ばらつきが小さくなった:ルール2,7
- データ改ざん!?の疑いがある:ルール2,4,7
「①ばらつきが大きくなった」場合は、何かしらの要因で品質のばらつきが大きくなっているので、その原因を突き止めます。
「②ばらつきが小さくなった」場合は、良い異常が発生している可能性があるので、品質を良くしている原因を突き止め、管理限界線の見直しをします。
「③データ改ざん!?の疑いがある」場合は、品質を良く見せようとして、ばらつきを小さくしたり、意図的に数値を変えている可能性があります。
データの取得方法に問題がないか確認をしましょう。
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管理図は工程を管理するのに非常に役立つツールです。
しかし、管理図のみでは工程の変化要因を特定することはできません。
まだ紹介していませんが、QC7つ道具などを活用し、良きも悪きも異常の要因特定をしましょう。
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要因特定には、管理図同士を比較することも有効です。
例えば、養鶏場AとBで同時に異常が検知された場合は、共通事項(天気や温度など)が要因と考えられますし、片方のみに異常があった場合は、非共通事項(エサ、日当たりなど)が要因と考えることができます。
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まとめ
①管理図は、工程が安定な状態か否かを判断するために使う
②管理図は、工程能力指数と違い、規格値は反映されない
③管理図は、計量値と計数値それぞれに対して複数存在する
④管理図に使われる用語で、群と\(n\)の違いを明確に理解する
⑤シューハート管理図には8つのルールがある
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次回は今回紹介した8種の管理図のうち、QC検定2級の出題範囲である7種類について、勉強していきます。
次回の記事では、管理限界線をどのように設定するかを学びましょう!
[…] 前回は記事「管理図1 管理図とは」で管理図の概念と見方について学びました。 […]
[…] 詳細は記事「管理図1 管理図とは」をご参照ください。 […]
[…] 今回の解説の詳細は記事「管理図1 管理図とは」をご参照ください。 […]
[…] 管理図の考え方は記事「管理図1 管理図とは」を、作り方は記事「管理図2 管理図の作り方」をご参照ください。 […]
[…] 次回からは管理図について学んでいきましょう! […]
メディアン管理図は1級の範囲です。
bar{x}-s 管理図が2級の範囲なので修正お願いします。
ご指摘ありがとうございます。
記事の修正を行いました。
これからもよろしくお願いします。