公開日2020年12月6日 最終更新日 2021年9月19日
みなさんこんにちは、michiです。
前回の記事では、新QC七つ道具を学びました。
今日は品質管理の実践1 と称して、QC検定に頻出の専門用語を学んでいきます。
この分野は単語の意味さえ覚えてしまえば、計算をしなくてよいので、数字が苦手な人はぜひ学びましょう。
キーワード:「品質管理」「マネジメント」
目次
①品質管理の考え方
品質管理の考え方として、テキストでは次の5つが挙げられています。
- 顧客志向
- プロセスの管理
- 重点志向
- 事実に基づく管理
- 管理のサイクル
それでは、一つずつ解説していきます。
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①顧客志向
顧客志向とは、お客様を最優先で事業を行うという考え方です。
似た考え方で、「マーケットイン」という言葉が良く使われます。
「マーケットイン」とは、お客様からの要望を反映させて製品やサービスを展開していくという考え方です。
マーケットインの反対が「プロダクトアウト」と呼ばれます。
「プロダクトアウト」では、お客様が望んでいる/いないは気にせず、生産者の望む方針で製品やサービスを展開するという考え方です。
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また、顧客志向というのは何も製品を買ってくれる人だけとは限りません。
「後工程もお客様」という考え方があります。
「後工程もお客様」というのは自分の次の工程の人に満足してもらえる仕事をするという概念です。
自分の工程でいい加減な仕事をすると、あと工程の人がその尻ぬぐいをしなくてはいけません。
自分の工程は自分が責任を持つ!それが大事になります。
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自分の工程は自分が責任を持つということに関連して、「自工程完結」と「TPM」という言葉も覚えましょう。
自工程完結とは、自分達の工程で発生した問題・課題は自分達で解決するという考え方です。
TPMとは、「Total Productive Maintenance」のことで、「自分の設備は自分で守る」という生産性向上に取り組む活動です。
なぜ設備のメンテナンスをすると生産性の向上につながるのでしょうか?
その理由は、設備の故障や設備のメンテナンス不足による不良発生などの、設備由来の生産効率の低下を防げられるためです。
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②プロセスの管理
プロセスの管理とは、製品の品質だけではなく、その製品を生み出すプロセスに着目することです。
「品質を作りこむ」ことで、安定して良い品質の製品を生み出せるようにします。
このようにプロセスを管理していく中で重要なことは「3ム(3Mとも)」の除去と「4M(+E)」の管理です。
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3ムとは、「ムダ・ムラ・ムリ」のことで、次のような意味になります。
- ムダ:目的に対して不必要な動作をすること
- ムラ:作業の動きや品質にばらつきがあること
- ムリ:設備や人に負荷の大きい作業をさせること
この「3ム」をなくすことが、生産性の向上と品質の安定への鍵となります。
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次に「4M(+E)」ですが、次の用語の英語の頭文字を取ったものです
- 作業者:Man
- 機械・設備:Machine
- 材料:Material
- 作業方法:Method
- 環境:Environment
これら「4M(+E)」は基準を定めて、標準作業の管理を行います。
工程で不適合品が増えた際は、「4M(+E)」の観点で標準作業と異なる作業を行っていないか調査していきます。
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③重点志向
重点志向とは、問題・課題があるときに、すべての問題・課題に対して改善策を講じるのではなく、優先順位を明確にして効果の大きいものから対策をするという考え方です。
経営資源(人・モノ・金)は限りがあるので、不具合要因全てに対処することは現実的に不可能です。
そこでFTAやパレート図を駆使し、不具合の原因の可能性の高いものから対処していきます。
重要なことは、100点の解決をすることではなく、目標数値を設定し、そのために必要な対策を分析し、実施することです。
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ここで勘違いしやすいのは、対策をいい加減にしてしまうことです。
100点を取ることを諦めるだけで、一つ一つの対策はしっかりと検証し、効果が認められれば標準化していきます。
一つ一つの対策をいい加減にしてしまうと、設定した目標数値に達するためにせっかく優先順位をつけて対策を決めたのに、意味がなくなってしまいます。
取捨選択と完成度は別の話なので混同しないようにしましょう。
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④事実に基づく管理
事実に基づく管理とは、データで事実を把握し、判断ー行動することです。
品質マネジメントの7つの原則「客観的事実に基づく意思決定」にも通じるものがあります。
事実に基づく管理は、課題解決の5つの階層の第1層に当たる根幹の部分です。
※課題解決の5つの階層は「世界で一番やさしい会議の教科書」に説明があるので、読んでみてください。
簡単に説明すると、下図のイメージです。
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事象:事実確認ができなければ、そもそも問題を定義することができません。
何かトラブルが発生した場合、いきなり第4階層の施策を始める人も多いですが、焦ってはいけません。
まずは事実確認をしましょう。
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さて、この事実に基づく管理の天敵は「KKD」になります。
KKDとは「経験・勘・度胸」のことです。
古い体質の会社では年功序列が強く残っています。
そのような会社では上に役職があがるほど、このKKDが強くなる傾向があります。
KKDを全否定する必要はありません(ときには重要です)が、ベースはあくまで事実に基づく管理を行いましょう。
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⑤管理のサイクル
管理のサイクルでは、PDCAとSDCAがあります。
PDCAは方針管理で使われる管理のサイクルで次の意味があります。
- P:Plan-目的を決め計画を作成
- D:Do-計画通り実施
- C:Check-実施した結果を確認・評価
- A:Action-必要に応じて適切な処置
SDCAは日常管理で使われる管理のサイクルで次の意味があります。
- S:Standard-目標を決め、標準を作成
- D:Do-標準通り実施
- C:Check-実施した結果を確認・評価
- A:Action-必要に応じて標準の見直し
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方針管理とは、経営目的を達成するために、中(長)期経営計画や短期経営方針を定め、それらを効率的に達成するために企業組織全体で行われる活動のことになります。
期初には方針の展開とすり合わせを行い、期末に方針の達成度評価と反省を行います。
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日常管理とは、部門別管理ともいわれ、各部門の担当業務について、その目的を効率的に達成するために、日常やらなければならないすべての活動のことになります。
基本は標準などに基づいた現状を維持する活動ですが、好ましい状態へ改善する活動も含まれます。
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②TQM
TQMとは、「Total Quality Management」の頭文字をとった言葉で、品質を中核をした組織の構成員すべての参画を基礎とする経営方法のことになります。
TQMはその歴史を覚えましょう。
品質管理はアメリカよりSQC(Statistical Quality Control)として戦後日本に導入されました。
その後、日本ではQCサークル活動と呼ばれる独自のものへ発展しました。
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顧客に満足される品質の製品を全社的に取り組むため、体制やノウハウを取り入れてTQC(Total Quality Control)と発展しました。
この品質管理に適用された考え方や手法はほかの分野でも使えたので、「マネジメント」という表現に変わりました。
その結果最終的に TQM となりました。
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③品質マネジメントシステム
ISO9000 2015では、7つの品質マネジメントの原則が明示されています。
7つの原則は以下の通りです。
- 顧客重視
- リーダーシップ
- 人々の積極的参加
- プロセスアプローチ
- 改善
- 客観的事実に基づく意思決定
- 関係性管理
それでは、一つずつ簡単に説明していきます。
①顧客重視
組織はその顧客に依存している。
組織は顧客要求を満たした、あるいは期待を超える製品やサービスを提供できるように努力しなくてはならない という考え方
先ほど説明したマーケットインの考え方です。
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②リーダーシップ
リーダーは、目的及び目指す方向を一致させ、人々が組織の目標の達成に積極的に参加している状況を作り出す役割
QC検定的には「リーダー」という言葉が出てきたら、ほぼ間違いなくリーダーシップのことになります。
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ここでナポレオンヒルの名著「思考は現実化する」では「マスターマインド」という言葉が出てきます。
本には、「マスターマインドとは、二人あるいはそれ以上の人たちが、完全な調和を基盤としお互いの持つ経験や知識、アイデアを分かち合って共通の目的・目標達成するために結成された同盟である」と書かれています。
_(:3」∠)_説明長い・・・
少し表現は異なりますが、リーダーシップにおいても、様々な経験や知識を持つ人達が共通の目的・目標を達成できるようにすることが重要になります。
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③人々の積極的参加
品質マネジメントは「全員参加」が基本になります。
組織内のすべての階層にいる、力量があり、権限が与えられ、積極的に参加する人々が、組織の実現能力の強化に必要という考え方です。
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④プロセスアプローチ
「良いプロセスなくして、良いアウトプットはない」というが考え方がプロセスアプローチの考え方です。
プロセスは「インプットを使用して、意図して結果を生みだす、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動」と定義されています。
結果であるアウトプットのみを考えるのではなく、アウトプットに至ったプロセスを管理していくことが重要になります。
誰かのアウトプットは誰かのインプット!ですよ。
⑤改善
改善とは、目標を現状より高い水準に設定して、問題や課題を特定し、問題解決または課題達成を繰り返す活動のことです。
改善とセットでよく使われる言葉に「維持」があります。
維持とは、目標を設定し、目標からずれないようにすることです。
目標からずれた場合はすぐに元に戻るようにします。
改善と維持はともに日常管理の項目になります。
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改善と維持の具体例を考えてみましょう。
例えば、部品Aは使用前に傷や汚れがあり、製品の性能に影響を及ぼしていました。
そこで、原因を調べてみると、保管している倉庫の2S(整理・整頓)ができていないことが原因と分かりました。
そこで2S(整理・整頓)を行うルールを作り、標準化しました。
ここまでが「改善」です。
次のプロセスは、この改善で標準化されたルールを守っていく「維持」を行います。
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標準化されたルールが維持され、品質の向上が達成できた際には、さらなる品質の向上のため、ほかの改善点を見つけ、「改善」していきます。
この繰り返しを日常管理として行うことで、品質の向上をめざします。
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⑥客観的事実に基づく意思決定
客観的事実に基づく意思決定とは、①品質管理の考え方でも書いた内容とほぼ同じで、読んで字のごとくとなります。
ファクトコントロールとも呼ばれます。
ポイントは「客観的事実」に基づくことです。
「客観的」の反対は「主観的」となります。
客観的事実は定性的より定量的、経験より記録、感覚との比較より基準との比較のことを言います。
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例えば、次の例題を考えてみましょう。
例「16時間の断食のおかげで体重が減って健康になった。健康に良いので続けよう」
果たして、この判断は「客観的事実に基づく意思決定」と言えるのでしょうか?
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・・・答えは NO です。
(。´・ω・)?
なぜでしょうか?その理由は次の通りです。
- 体重がどのくらいの期間でどの程度減ったかが不明
- 体重が減ったことと健康になったことの因果関係が不明
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①については、本当に体重が減ったのか、変動(ばらつき)の範囲内ではないのか?を定量的に判断する必要があります。
②については「一般的に」は体重が減った方が健康と言われていますが、この例題の人にそれが当てはまるとは限りません。
この人にとっての「健康」が何であるかを定義し、体重が減った結果をその定義と照らし合わせて、その因果関係から判断する必要があります。
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このように、意外と「客観的に判断する」ことは難しいです。
「客観的に判断する」するためには「基準」となる数値を設定することが重要になります。
体重が100kgの人から見れば2kgは誤差かもしれませんが、体重が50kgの人からみれば、2kgは誤差とは言えないかもしれません。
「客観的に判断」しているつもりでも、意外と「主観的に判断」してしまうことがあるので、気をつけましょう。
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⑦関係性管理
関係性管理とは、組織と密接に関連する利害関係者との関係をマネジメントし、持続的な成功を目指すことです。
日本では昔から、「三方良し」という考え方があります。
三方良しとは、「売り手良し」「買い手よし」「世間良し」のことです。
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例えば、買い手が目先の利益を最優先させて、売り手に過剰なコストダウンを要求したとしましょう。
すると、売り手は利益が減り、設備の増資や更新がしづらくなります。
その結果、製品の品質低下や最悪の場合廃業してしまうかもしれません。
すると、今まで購入で来ていた品質の製品を継続的に購入できなくなってしまう「買い手」が困ることになります。
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自分の目先の利益にとらわれるのではなく、利害関係者との協力が重要です。
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まとめ
①品質管理の考え方 で覚えるのは5つ
②TQM:Total Quality Management
③品質マネジメントシステム で覚えるのは7つ
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今回は言葉を覚えるだけなので、(* ̄- ̄)ふ~ん そうなんだって感じだと思います。
しかし、知っていない単語は答えようがないので、しっかりと復習しましょう。
次回は今回紹介しきれなかった専門用語を学んでいきましょう。
[…] 次回は品質管理の実践分野として、専門用語を学んでいきましょう。 […]