公開日2020年4月5日 最終更新日 2022年7月25日
みなさんこんにちは、michiです。
前回までは二項分布について考えてきましたが、QC検定2級では「ポアソン分布」という確率分布も出題されます。
ポアソン分布は「ごくまれに発生する現象」についての確率分布です。
今回はポアソン分布について学んでいきましょう。
キーワード 「ポアソン分布」「ポアソンの少数の法則」
目次
①ポアソン分布とは…
ポアソン分布の一般式は以下の通りです。
\[P(x)=\frac{λ^x・e^{-λ}}{x!}\]
λ:母平均、 x:発生回数、 e:ネイピア数(微積分しても値の変わらないアレ)
期待値 \(E(x)=λ\) 、 分散 \(V(x)=λ\)
なんと期待値と分散が同じ値=\(λ\) で表されます。
\[\]
指数計算の復習もかねて、例題を考えてみましょう。
「ごくまれに発生する現象」ですので・・・1/400くらいの確率を考えます。
※好きな人と両想いになれる確率らしいです・・・
\[\]
この分布がポアソン分布に従うと仮定すると、もし1000人の異性に会うとして ①だれとも両想いになれない確率 ②1人の人と両想いになれる 確率は、
①だれとも両想いになれない確率: \(P(0)=\frac{2.5^0・e^{-2.5}}{0!}=・・・=0.082\) ※約8.2%
②1人の人と両想いになれる確率: \(P(1)=\frac{2.5^1・e^{-2.5}}{1!}=・・・=0.205\) ※約20.5%
※つまり1000人の婚活パーティーでも、ザンネン80人は確率的に片思いです。
\[\]
計算するにあたって、とりあえず\(λ=2.5\) ってどこからきたか疑問ですよね。
でもこの値「 \(λ=\)母平均」は簡単に求まります。
なぜなら、今両想いの確率は1/400で、1000人の異性に会うのですから・・・
\[1÷400×1000=2.5\]
\[\]
つぎに、0乗と0の階乗ですが、 \(2.5^0=1\)、\(0!=1\) これは定義です。
この記事では紹介しませんが、そうなるんだ!と覚えてください。
(・ω・)ゞ
すると、
①だれとも両想いになれない確率: \(P(0)=\frac{2.5^0・e^{-2.5}}{0!}=\frac{1・e^{-2.5}}{1}=0.082\)
\[\]
また、\(2.5^1=2.5\)、 \(1!=1\) ですので、
②1人の人と両想いになれる確率: \(P(1)=\frac{2.5^1・e^{-2.5}}{1!}=\frac{2.5・e^{-2.5}}{1}=0.205\)
これで計算はバッチリ・・・と言いたいのですが
\[\]
そうです、肝心の \(e^{-2.5}\) の計算がわからないです!
(;´・ω・)
これはエクセルで計算した値なのですが、QC検定中にエクセルなんて使えません。
\[\]
しかし、ご安心ください。
(。´・ω・)?
QC検定では\(e^{-x}\)の計算結果は問題文中に書かれています。
また、乗数も0か1くらいしか出てこないので、試験はこの記事の内容だけでなんとかなります。
\[\]
②なぜポアソン分布?
もう一度ポアソン分布の式を見てみましょう
\[P(x)=\frac{λ^x・e^{-λ}}{x!}\]
λ:母平均、 x:発生回数、 e:ネイピア数(微積分しても値の変わらないアレ)
二項分布の式は、以下の通りでした。
\[ P(x) = \scriptsize{n}\large{C}\scriptsize{x} × p^ x × (1-p)^{n-x} \]
全然ちがう計算式にみえますが、ポアソン分布は二項分布の式から派生しています。
そのような理由もあってか、QC検定2級では二項分布とポアソン分布が出題されます。
もう少し詳しくみてみましょう。
(。´・ω・)?
\[\]
③二項分布からポアソン分布へ
先ほどの「両想いになれる確率」をもう一度考えましょう。
両想いになれる確率は1/400なので、\(n=400,\quad p=0.0025\)となります。
今度は、5人の人と両想いになれる確率を、二項分布で考えてみます。すると、
\[P(5)=\scriptsize{400}\large{C}\scriptsize{5} × (0.0025)^ 5 × (0.9975)^{395}\]
・・・(;´Д`)
いや、もう、計算したくない・・・
あ、でも期待値は簡単に計算できましたよね。
期待値は\(E(x)=np\) ですので、今回の場合は\(np=1\) です。
実は、この \(np=λ\) とすることで、二項分布⇒ポアソン分布 となります。
\[\]
このことを「ポアソンの少数の法則」と言います。
※少数とは少ない数という意味で、小数(1より小さい数)とは意味が異なります。
\[\]
④ポアソンの少数の法則の証明
ではなぜ、\(P(x) = \scriptsize{n}\large{C}\scriptsize{x} × p^ x × (1-p)^{n-x} \) ⇒ \(\frac{λ^x・e^{-λ}}{x!}\) となるのでしょうか?
まず前提条件として、ポアソン分布は「ごくまれに発生する現象」なので、\(n\)⇒大、\(p\)⇒小 であり、\(np≒λ\) とします。
※発生する確率 \(p\)⇒小 の時、発生回数 \(x\)⇒小 となります。
わかりやすく考えるため、初めに数式をいくつか式変形しておきます。
\[\scriptsize{n}\large{C}\scriptsize{x}=\frac{n!}{(n-x)!・x!}=\frac{n(n-1)・・・(n-x-1)}{x!}\]
\[p^x=\left(\frac{λ}{n}\right)^x=\frac{λ^x}{n^x}\]
\[(1-p)^{n-x}=(1-p)^n(1-p)^{-x}\]
\[(1-p)^n=\left(1-\frac{λ}{n}\right)^n≒e^{-λ}\]
\[(1-p)^{-x}≒1\]
上から順に、
- \(\scriptsize{n}\large{C}\scriptsize{x}\)は、Conbinationを変形 分子の数字のカズは、\(x\) の値と同じになる。※1
- \(p^x\) \(p=\frac{λ}{n}\)を代入
- \((1-p)^{n-x}\) を分解して\((1-p)^n(1-p)^{-x}\)
- \((1-p)^{-x}\) は\(p\)⇒メチャクチャ小さい数、\(x\)は有限の数なので、ほぼ 1
- \((1-p)^n=(1-\frac{λ}{n})^n\) は \(p=\frac{λ}{n}\)を代入、そこから\(n\)⇒∞の極限をとって、\((1-\frac{λ}{n})^n ≒ e^{-λ}\) ※2
※1 例えば \(\scriptsize{7}\large{C}\scriptsize{3}\)では、分子の掛け算する数字のカズは、\(x=3\) 個の数字を掛け算しています。
\[\scriptsize{7}\large{C}\scriptsize{3} = \frac{7・6・5}{3・2・1} \]
※2 \((1-\frac{λ}{n})^n ≒ e^{-λ}\) のところですが、これは以下の公式からきています。
\[\displaystyle \lim_{n\to\infty}{(1+\frac{x}{n})}^n = e^x\]
この式で、\(x =\quad – λ\) とすることで、※2 の式変形が可能となります。
詳しくは、ここで説明しません。
(;´Д`)💦
準備が整ったので、二項分布の式を計算していきます。
\[P(x) = \scriptsize{n}\large{C}\scriptsize{x} × p^ x × (1-p)^{n-x} \]
\[=\frac{n(n-1)・・・(n-x-1)}{x!} × \frac{λ^x}{n^x} ×(1-p)^n(1-p)^{-x}\]
\[=\frac{n(n-1)・・・(n-x-1)}{n^x} ×\frac{λ^x}{x!} ×e^{-λ}\]
\[=\frac{λ^x×e^{-λ}}{x!}\]
これで証明終了なのですが、ひとつ疑問がありますよね?それについて考えていきましょう。
\[\]
⑤\(\quad\large{\frac{n(n-1)・・・(n-x-1)}{n^x}}\) はどこへ消えた?
さて、「ポアソンの少数の法則」より、二項分布からポアソン分布への変形
\[P(x) = \scriptsize{n}\large{C}\scriptsize{x} × p^ x × (1-p)^{n-x} ⇒ \frac{λ^x・e^{-λ}}{x!}\]
は証明できました。
ところで、 \(\large{\frac{n(n-1)・・・(n-x-1)}{n^x}}\) はどこに消えたのでしょうか?
(。´・ω・)?
\[\]
\[\frac{n(n-1)・・・(n-x-1)}{n^x} ×\frac{λ^x}{x!} ×e^{-λ}=\frac{λ^x×e^{-λ}}{x!}\]
という結果より、 \(\large{\frac{n(n-1)・・・(n-x-1)}{n^x}} = 1\) となったようです。
\[\]
このことを考えてみます。
まず、分子の \(n(n-1)・・・(n-x-1)\) ですが、これは \(x\)個の異なる数字を掛け算した値です。
※\(\scriptsize{n}\large{C}\scriptsize{x}\)の計算を思い出してみてください。
また、分母は\(n\)を\(x\)回掛け算した値ですので、以下のように式変形できます。
\[\frac{n(n-1)・・・(n-x-1)}{n^x} \quad= \frac{n}{n} ×\frac{n-1}{n}×・・・×\frac{n-x-1}{n}\]
\[=\frac{n}{n}×\left(\frac{n}{n}-\frac{1}{n}\right)×・・・×\left(\frac{n}{n}-\frac{x+1}{n}\right)\]
\[\]
さて、いま \(n\) はすごく大きい数 \(n\)⇒大 という前提条件でした。
つまり、\(\frac{1}{n} ⇒ 0\) へと収束します。すると、
\[\frac{n}{n}-\frac{1}{n} ⇒ \frac{n}{n}\quad = 1\]
となります。また、発生回数\(x\) は\(n\)に比べるとすごく小さい数なので、\(\frac{x+1}{n} ⇒ 0\) も同様に成り立ちます。
\[\frac{n}{n}-\frac{x+1}{n} ⇒ \frac{n}{n}\quad = 1\]
さぁ、もうおわかりですね、
\[\frac{n}{n}×\left(\frac{n}{n}-\frac{1}{n}\right)×・・・×\left(\frac{n}{n}-\frac{x+1}{n}\right)\]
\[≒\frac{1}{1}×\left(\frac{1}{1}-0\right)×・・・×\left(\frac{1}{1}-0\right)\quad=1\]
これで、\(P(x) = \scriptsize{n}\large{C}\scriptsize{x} × p^ x × (1-p)^{n-x} ⇒ \large{\frac{λ^x・e^{-λ}}{x!}}\) の説明はおわりです。
\[\]
⑥ポアソン分布の式の覚え方
二項分布からポアソン分布の式への説明はわかりましたが、QC検定の時にその形を覚えている必要があります。
ということで、語呂を考えました。
\[\]
「平常かい?異常まいった、貝ビックリ Σ(・ω・ノ)ノ!」
\[P(x)=\frac{λ^x・e^{-λ}}{x!}\]
λ:母平均、 x:発生回数、 e:ネイピア数(微積分しても値の変わらないアレ)
「平常かい?」は「平均の乗数が発生回数」、「異常まいった」は「\(\large{e}\)の乗数がマイナスの平均」、「貝ビックリ Σ(・ω・ノ)ノ!」は「発生回数の階乗(!)」を表します。
※「異常まいった」のところですが、「平」は「たいら」と読めますよね!!
語呂にむりがあるって? キコエナイ・・・ ♪~( ̄ε ̄;)
「Σ(・ω・ノ)ノ!」を付けた理由はノリです。
何回かこの呪文を唱えることで、きっと覚えられることでしょう。
\[\]
⑦ポアソン分布の期待値と分散
最後にポアソン分布の期待値 E(x)=λ 、 分散 V(x)=λ について簡単に説明します。
まず期待値ですが、二項分布の期待値は \(E(x)=np\) でした。
ポアソン分布では、 \(np=λ\) としたので、ポアソン分布も期待値\(E(x)=λ\) となります。
\[\]
次に分散ですが、二項分布の分散は \(V(x)=np(1-p)\) でした。
ポアソン分布では、\(n\)⇒大、\(p\)⇒小 という前提条件ですから、\((1-p) ≒ 1\) となります。つまり、
\[ V(x) = np(1-p) ≒ λ×1 =λ\]
ポアソン分布で困ったら、とりあえず λ !!!
\[\]
まとめ
①ポアソン分とは「ごくまれに発生する現象」の確率分布
②二項分布とポアソン分布は親戚みたいなもの
③期待値 \(np⇒λ\) とすることで、ポアソンの少数の法則より、\(P(x) = \scriptsize{n}\large{C}\scriptsize{x} × p^ x × (1-p)^{n-x} ⇒ \large{\frac{λ^x・e^{-λ}}{x!}}\)
④二項分布の \(n⇒大\) \(p⇒小\) がポアソン分布
⑤厄介な\(\quad\large{\frac{n(n-1)・・・(n-x-1)}{n^x}}\) は \(1\)になる。
⑥覚え方は「平常かい?異常まいった、貝ビックリ Σ(・ω・ノ)ノ!」
⑦ポアソン分布では、期待値も分散も λ
\[\]
次回は期待値と分散の性質について勉強していきましょう!
[…] 前回までに二項分布とポアソン分布という二種類の確率分布を学びました。 […]